トーキョーサンドウィッチ

大阪出身 東京在住27歳 羨望と怠惰に挟まれて、今日も生きています。 Twitter : ry0oooooo0ta

たまごサラダでは恥ずかしい

朝ごはんは食べないほどに起床が遅い僕は、とはいえお腹が減るので昼の12時頃には何を食べようか今日も考える。

 

ここのところ社食を選択することが多い。本当はビルからはなれた気候のいい場所でごはんが食べたいけれど、コンビニよりも少しは健康な気がするから社食という単純な動機。いくつかから選べるが、スティーブジョブズがイッセイミヤケのタートルネックを選ぶように京風かけうどん大盛ちくわ天のせがいつもの僕。(ちなみにスターバックスではカプチーノ/グランデサイズ/ショット追加だ。店員の復唱を考えるとトリプルグランデカプチーノでいいと思うのだけど、あまりそちら側の言葉に踏み込むのは違うと思っている。)スターバックスでかき消しそうになったのでいつもうどん食べてる話に戻すと、うどんメインな中にも時折違うのをはさんでおり、今日がその時折の日だった。

 

今日は明太子パスタにした。健康に少し興味の出る年頃だから申し訳程度にサラダをつけるのが、ここのパスタを利用するときのぼくのルールだ。(ちなみにうどんには一緒に頼むサラダが今ない。前まであったから復活してほしい。)

 

僕はサラダの入ったレジ下の透明な冷蔵庫を見てみた。サラダと一口にいうものの色々なサラダを作っていることを知っているから、今日は何かって楽しみに見てる。マカロニの時もトマトの時もある。ポテトサラダとトマトのときもあるし、トマトを一面に敷き詰めごり押すときもある。こうやって仕入れの状況とかをうまく調整してんだろかとか変に勘ぐったりもする。まあそんなバリエーションでいえば別にどれだっていいっちゃいんだけど、今日はちぎりレタスをベースとしてひじきレンコン的なものと銀だこがたこ焼きに乗っけてきそうなたまごのものの2種類があった。今日はいつもよりもおなかが減っていたから少しおなかにぐっときそうなたまごのほうが欲しかった。

 

 今までも2種類のサラダが冷蔵庫に見えた過去のことは覚えていて、そんときに確かれんこんだったかな、イメージしていたほうと違ったサラダが手元に出てきた。(書いていて気付いたがれんこんがあまり好きじゃないかもしれない。別にどっちでもいいわけじゃなかったのはあつかましい発見だ。)自分から言ってないから伝わらなくてもそこは仕方がなくて、それでも、少し悲しくなったことを割と鮮明に覚えてる。だからたまごのほうが欲しいことはきちんと言おうと思った。 

 

ここで性根が見えっ張りで自意識過剰な僕は恥の感情と向き合う。たかだかサラダの種類を選択してくるやつなんているんだとひょうし抜かれるんじゃないのか。いい歳こいてひじきれんこんが苦手だと思われんじゃないか(少し当たっている)。このぼくが銀だこで出てきそうなやつと形容したたまごのほうのサラダはどのように表現すればくすっとされずに済むのか。ひじきじゃない方って言えば消去法でわかりそうだけれど、第3のマカロニサラダが控えていた時に過剰に会話が生まれそうだなだとか、言い方にひじき嫌悪がすごいのでそれもそれで恥ずかしいかなだとか。冷蔵庫を確認してから注文するまでの間、長らく割れたままにしてある会社支給のスマホでslackを見ているふりをしながら結構悩んだ。

 

結局僕はまがりなりにもスマートを標榜していたいので、シンプルに「パスタとサラダ、たまごのほうで」と頼んだ。我ながら自然体での回答が出来たとおもっていたが、いつもレジにいる(勝手に)顔見知りのお姉さんは「えっ?」と聞き返してきた。たまごのほうのサラダを熱望するやつなんてこれまでいなかったから、意識の外からやってきた言葉だったから、これも当然の反応で合って仕方がないだろうと冷静に判断し、「パスタとたまごのほうのサラダが食べたいです」と言った。「食べたいです」発言が妥当なのか、ちょっと母性本能をくすぐりに行った上での小悪魔的発言なのかはわからないけれど、ぼくはたまごのほうのサラダが食べたいですと言った。お姉さんはわかりました、たまごサラダですねと言った。ぼくはそうですありがとうございますと伝え、伏目がちに支払いのためにスマホを差し出した。

 

そこまでは良かった。レジから厨房にかけて「店内パスタサラダセット、たまごサラダです。お願いします。」と半径の幅が少し広がる声量でお姉さんが伝えた。スターバックスでおなじみのオーダーを知らせるあれだ。トリプルグランデカプチーノだ。いつものオーダーを知らせるあれだったらば「店内パスタサラダセットお願いします。」なのに明らかにイレギュラーな「たまごサラダ」が挟まれた。ぼくも苦手ながらに最近オペレーションを組み立てる仕事などをしていたりもするから気持ちがわかるが、イレギュラーはあまり好まれないし、緊張感が伝わる。正式名称が「たまごサラダ」であるかも覚束ないレベルの、イレギュラー界でも際立ちのイレギュラーであることが緊張感のある声色からもわかった。ロックフェスに出るcreepy nutsとかじゃなくて、学祭に出る仮面女子などでもなく、youtuberに転身した脱退した宗教家の息子くらいのイレギュラーであった。なんせ、スマホを差し出せばsuicaで支払うことを察してくれるくらいには練度の高いお姉さんだ。簡単な揺さぶりじゃ動揺は引き出せない。

 

そもそもの話で言うと、レジのお姉さんが本人が冷蔵庫からサラダを取り出すことは行っているはずなので、ことさらにたまごサラダであることを厨房の人に伝える必要があったのかは審議だ。だが、お姉さんにそのような冷静さを無くさせるだけの緊張をぼくのたまごのほうのサラダが食べたい発言で与えたというのが事実だ。明らかにたまごにこだわっているこいつにひじきを出せば相当文句言われると思ったのかもしれない。君の膵臓が食べたいよりはマシかと思うが、それなりにびっくりさせてしまったというそのことが、ぼくの恥ずかしさを冗長した。

 

この話には続きがまだ残っていて、レジのお姉さんから手の離れたぼくのパスタサラダセット(たまご)は、提供のおねえさんにさえも「パスタサラダセット、サラダがたまごサラダのお客様ー」と大声を出させてしまった。公になったたまごサラダの恥ずかしさから列を離れて水を取りに行ったり、少し長めに時間をとって席を確保しにいくといった行動が仇になって、これまた提供者のおねえさんに緊張感のあるたまごサラダを強いてしまった。更衣室に忘れられたブリーフの持ち主を探す担任の先生に対して感じたもうかんべんしてくれよっていうまさにそんな気持ちだった。たまごサラダは意識ここにあらずでおもむろにかけたワサビ風味のドレッシングが結構はまっていて期待通りに美味しかった。恥じらいと引き換えに手に入れた、ひじきれんこんには出せない至福の味だった。

 

こんな自意識をこじらせるくらいならばロックンロールでもやって生きていれば良かったのになんて、SUNNY CAR WASHの曲を聴きながら、昼の出来事を綴りそう思った。

そんな勇気もまるでないくせにね。